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千年も万年も、永久に立ちつづけなければならないとしても、それでも、いま死んでしまうよりは、そうやって生きたほうがいい、というんだった。なんとか生きていたい、生きて、生きていたい! どんな生き方でもいいから、生きていたい! - 本で出会った素敵な言葉 vol.00088

 

【投稿者】

30代 女性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

どこで読んだんだったけ? なんでも死刑を宣告された男が、死の一時間前に言ったとか、考えたとかいうんだった。もしどこか高い岸壁の上で、それも、やっと二本の足で立てるくらいの狭い場所で、絶壁と、太陽と、永遠の闇と、永遠の孤独と、永遠の嵐に囲まれて生なければならないとしても、そして、その一アルシン四方の場所に一生涯、千年も万年も、永久に立ちつづけなければならないとしても、それでも、いま死んでしまうよりは、そうやって生きたほうがいい、というんだった。なんとか生きていたい、生きて、生きていたい! どんな生き方でもいいから、生きていたい!……なんという真実だろう! ああ、なんという真実の声だろう! 人間は卑劣な存在だ! だが、だからといって、人間を卑劣と呼ぶやつも、やはり卑劣なんだ

 

【タイトル・著者】

ドストエフスキー「罪と罰」

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

人間の生にたいする執着とはどのようなものなのか、この主人公の言葉に全てが集約されているように思われ、印象深い一節としてずっと心に残っています。『罪と罰』を初めて読んだとき自分は高校生で、思春期特有の人間存在の本質云々の悩み「どうして生きなければならないのか、逆に生きるのが辛くても死に急げないのは何故なのか」を日々抱えて過ごしていました。 主人公の言葉から、結局どんな過酷な状況に陥っても尚人は生に執着するものであり、生きることそれ自体に希望を見ているのだと理解しました。そしてそのような執着を卑劣だと非難している当人もその執着からは逃れられないのだと。 少しだけこの言葉に救われ、思春期を乗り切ったような気がします。そのときから既に15年以上が経ちましたが、未だに忘れられない言葉です。

【本の内容】

鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその妹まで殺してしまう。この予期しなかった第二の殺人が、ラスコーリニコフの心に重くのしかかり、彼は罪の意識におびえるみじめな自分を発見しなければならなかった。