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ならば無能で、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか。それが世の習いと申すなら、このわしは許さん。 - 本で出会った素敵な言葉 vol.00013

 

【投稿者】

30代 男性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。 これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ。 強き者が強きを呼んで果てしなく強さを増していく一方で、弱き者は際限なく虐げられ、踏みつけにされ、一片の誇りを持つことさえも許されない。 小才のきく者だけが、くるくると回る頭でうまく立ち回り、人がましい顔で幅をきかす。 ならば無能で、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は、踏み台となったまま死ねというのか。 それが世の習いと申すなら、このわしは許さん。

 

【タイトル・著者】

和田竜「のぼうの城」

 

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

私自身が、この主人公同様に「とろく、不器用で才なき」者であるから多くの共感する部分がある。上手く手を抜いているのに、上司のご機嫌をとるのが上手で、不器用に生きる人をだしにして、自分をいいように見せることばかりに長けた人がいる。あるいは、気が弱そうな人だからといって、自分の失敗を押し付けるような上司もいる。 けれども、そんな才なき人々にも人としての誇りがある。愚直だけが取り柄のような者は、それでもいつしか自分の努力が報われる日がくると信じて、日々歯を食いしばって頑張っているのだ。そんな陰で生きているような人たちの想いを見事に表してくれている名言に出会ったと思う。

【本の内容】

2012年11月2日(金)公開の映画化原作!2009年本屋大賞2位、 第139回(2008年上半期)直木賞ノミネートの戦国エンターテインメント大作! 「戦いまする」 三成軍使者・長束正家の度重なる愚弄に対し、予定していた和睦の姿勢を翻した「のぼう様」こと成田長親は、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負ら癖のある家臣らの強い支持を得て、忍城軍総大将としてついに立ちあがる。 「これよ、これ。儂が求めていたものは」 一方、秀吉に全権を託された忍城攻城軍総大将・石田三成の表情は明るかった。 我が意を得たり、とばかりに忍城各門に向け、数の上で圧倒的に有利な兵を配備した。 後に「三成の忍城水攻め」として戦国史に記される壮絶な戦いが、ついに幕を開ける。