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昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。 - 本で出会った素敵な言葉 vol.0177

 

【投稿者】

30代 女性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」

 

【タイトル・著者】

村上春樹「風の歌を聴け」

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」の最後に掲げられた一文です。作中で何度も言及される架空の作家、デレク・ハートフィールドの墓碑に刻まれているニーチェの言葉と説明されていますが、実際のニーチェの著作の中に、この文章にあたるものはないのだそうです。私が「風の歌を聴け」を読んだのは中学生の頃で、学校や教師や勉強という色んなものに、とにかく反抗したい、でも臆病でそれを実行にうつすことはできないという、いわゆる「中二病」の真っ最中でした。そんなときにこの小説を読み、乾いた文体と特に何も起こらない、けれども何かがとても悲しいというストーリーに触れて、自分が一気に大人になったような気がしました。最後を飾るこの一文は特に、自分のひねくれてこじれた自意識を象徴し、代弁してくれているようで、座右の銘のように思っていました。それからずいぶん経ち、自意識のこじれどころではない、もっと深い闇やもっと辛いことをいくつか経験した今でも、この言葉は自分の心の中にくっきりと、とても鮮やかに刻まれています。人生にも世の中にも、明るい場所ばかりではない、真っ暗闇だけが広がる場所があるということ、それを知らないまま生きる人もいれば、そこを通り抜けて光のところへ戻る人もいるし、暗闇から抜け出せない人もいるということ。夜の闇は怖いこともあるけれど、そこには大事なものが隠されているということ。それから、夜の闇から生まれた芸術作品は、信じられないくらい美しいということ。私の人生でとても大切な経験である、これらのことを象徴するのが、この言葉だと思っています。

【本の内容】

村上春樹のデビュー作
1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。僕たちの夢は、もう戻りはしない――。群像新人賞を受賞したデビュー作

1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

 

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