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人材というものは、これ以後生まれないのではないかと恐れれば実際に生まれないものであり、反対に、そのような心配にわずわされず断固とした処置を決行する国では、うまれてくるものであります - 本で出会った素敵な言葉 vol.0156

 

【投稿者】

40代 女性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

委員諸君、ゼンほどの人物を知れば、それを葬り去る決定を迫られて迷うのは当然であります。 しかし、わすれないでほしい。 人材というものは、これ以後生まれないのではないかと恐れれば実際に生まれないものであり、反対に、そのような心配にわずわされず断固とした処置を決行する国では、うまれてくるものであります

 

【タイトル・著者】

塩野七生「サイレント・マイノリティ」

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

私がイタリアに来たのも、塩野七生さんの著作に惚れ込んだ結果でした。塩野さんが描くイタリアと、実際に住むイタリアには大きな隔たりがありましたが、唯一肌で感じたのは、イタリア人には塩野さんがいうところの「オトナ」が多いな、ということです。すべてではありません。しかし、自分の目で見、考え、他者にそれを伝えるという技術を、イタリア人は小学校で習うのだそうで、学歴に関係なく頭が良くて話がうまい人は日本人よりも多いかもしれません。 「サイレント・マイノリティー」は大好きなエッセイで、もう何十回読んだことか自分でもわかりません。特にこの「幸福な例」というエッセイは白眉でした。カルロ・ゼン、という大変華々しい経歴を持つヴェネツィア人が、ズボラにしていた金銭関係を同僚たちにつかれます。ゼンは、華々しいだけではなく有能なことも万人に知られており、クールな理性で物事を対処してきたヴェネツィア人たちは、揚げ足取りとは反対の意味で、カルロ・ゼンを政治的に葬り去ることをおそれたのです。つまり、こんなスキャンダルで有能な人材を葬るのは惜しい、と誰もが思ったわけです。しかし、ヴェネツィアは法を遵守することで成り立ってきた国家です。最終的に、ある議員のこの言葉でゼンは歴史の舞台から立ち去ることになります。が、この議員の言葉通り、ヴェネツィアはその後も有能な人材には事欠かずに繁栄を迎える、というまさに「幸福な国家」のお話でした。塩野さんも当時はお若く、文章に非常にリズム感と独特のユーモアがあり、名エッセイのひとつだと思っております。

【本の内容】

みずからの置かれた状況を冷静に把握し、果たすべき役割を完璧に遂行する。しかも皮相で浅薄な価値観に捉われることなく、すべてを醒めた眼で、相対的に見ることができる人間――それが行動的ペシミスト。「声なき少数派」である彼らの代表として、大声でまかりとおっている「多数派」の「正義」を排し、その真髄と美学を、イタリア・フィレンツェで綴ったメッセージが本書である。