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互いに強情だし、それにうそをいわぬ親子なのだろう。おれはもうさっぱりとお前たちの幸福を祈るばかりだが、おぼえておいてくれ、もし万一病気その他の不幸がある時は、結婚に反対した父を思い出さないで、それまでのおれの姿を思い出してもらいたい - 本で出会った素敵な言葉 vol.0155

 

【投稿者】

40代 女性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

互いに強情だし、それにうそをいわぬ親子なのだろう。おれはもうさっぱりとお前たちの幸福を祈るばかりだが、おぼえておいてくれ、もし万一病気その他の不幸がある時は、結婚に反対した父を思い出さないで、それまでのおれの姿を思い出してもらいたい

 

【タイトル・著者】

幸田文「きもの」

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

主人公のるつ子は、二人の気の強い姉と、優しい兄、洒脱でクールなちちと、大ざっぱです腰野暮ったい母、理の通った生き方をしている祖母に囲まれて成長します。るつ子自身も、父に似て理の勝った潔癖な女性に成長しますが、なぜか恋に落ちてしまったのは誰もが予想しなかった軟弱な色男でした。たくさんいる子供たちの中でも、とくにるつ子二期対をしていた父は猛反対しますが、最終的に折れてこの言葉をるつ子に贈りました。私も、両親の大反対を越えて結婚しました。結婚を後悔したことはありませんが、自分が親になると両親の思いもよく分かります。私の父は二年前になくなってしまいましたが、折りにつけ思い出す父と、このるつ子の父の言葉がいつも重なり合います。

【本の内容】

明治時代の終りに東京の下町に生れたるつ子は、あくまできものの着心地にこだわる利かん気の少女。よき相談役の祖母に助けられ、たしなみや人付き合いの心得といった暮らしの中のきまりを、“着る"ということから学んでゆく。現実的で生活に即した祖母の知恵は、関東大震災に遭っていよいよ重みを増す。大正期の女の半生をきものに寄せて描いた自伝的作品。著者最後の長編小説。