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前に死ねなかった蝉の話したの、あんた覚えてる? - 本で出会った素敵な言葉 vol.0137

 

【投稿者】

40代 女性

【本で出会った素敵な言葉・好きな一節・感動した一文】

前に死ねなかった蝉の話したの、あんた覚えてる?七日で死ぬよりも、「八日目に生き残った蝉の方がかなしい」ってあんた言ったよね。 私もずっとそう思ってたけど、それはちがうかもね。八日目の蝉はほかの蝉にはみられなかったものを見られるんだから。 見たくないって思うかもしれないけど、でもぎゅっと目を閉じてなくちゃいけない程に、ひどいものばかりでもないと私は思うよ。

 

【タイトル・著者】

角田光代「八日目の蝉」

 

【その言葉が好きな理由・感動した理由】

自分も最初は、七日目に仲間と同じ運命を歩むはずが、八日目に一人残されるって死ぬよりつらいかもって思ってたけれど、この分を読んでものは考えようというか、たった一日だけ長く与えられた特典、神様からのプレゼントとして日々を大切にしようって考えた方が楽しいし、幸せな考え方だと思って。そして「ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけない程にひどいものばかりでもない」という表現も、奥ゆかしいというかかわいらしくてなんだか好きです。

【本の内容】

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。