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センセイの鞄:川上弘美 - おすすめの恋愛小説 vol.0087

 

【おすすめの恋愛小説】

川上弘美「センセイの鞄」

 

【おすすめの理由】

高校時代の国語教師と主人公の生徒だった女性が居酒屋で再開し、交流を深めてゆく小説です。定年退職している老人と未婚の中年女性の恋愛。20代の私にはとっつきにくい登場人物かと思いましたが、せんせいの言葉遣いや主人公とのやりとりのテンポ感が好きで一気に読了しました。 大きな恋愛イベントがあるわけではありませんし、とてもプラトニックなので、キュンキュンするのが好きな方には向かないかもしれませんが、じんわりと心が温かくなって、自分もこんな人に出会いたいと思わせてくれるようなとても素敵な小説です。

【本の内容】

第37回(2001年) 谷崎潤一郎賞受賞
川上弘美といえば、生き物とモノ、時間と空間などさまざまなものの境目が溶け、混じり合うような、エロチックで不思議な世界を描いた作品が特徴的だ。 本書では、日常を静かに淡々と過ごしていた2人がゆっくりと近づき、季節の移り変わりとともに、互いの関係を育んでいく大人の恋愛を描いている。恋愛といっても、勢いにまかせた情熱のそれとは違う。穏やかな情愛というほうが、しっくりくるような愛だ。あのどろりとした「川上ワールド」を期待する読者はちょっともの足りなさを覚えるかもしれない。 およそ恋愛とは結びつかないはずの2人―― 38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来の仲だ。お互い1人で酒を飲み、さかなの好みがよく似ている。 「『女のくせに手酌ですかキミは』センセイが叱る。『古いですねセンセイは』と口答えすると、『古くて結構毛だらけ』とつぶやきながらセンセイも自分の茶碗いっぱいに酒を注いだ」 憎まれ口をたたき合いながら、2人は共に過ごすようになる。 センセイはツキコさんの高校時代の国語の先生だ。背筋をしゃきんと伸ばし、ジャケットを着、いつも同じ黒いかばんを頑固に持っている。一方のツキコさんは独身でもてないわけではないのだが、同世代の男性に誘われてもぴんとこない。かつては恋人とさえ「ぬきさしならぬようになってしまう」のを恐れていた。そんなツキコさんが、しだいにセンセイを強く求めるようになっていく。 30歳の年齢差を超えるというよりむしろ、センセイの老いをしっかりと見つめていくツキコさん。ツキコさんのまっすぐな思いをまぶしい気持ちで受け止めるセンセイ。進展しているのかなんなのか、じれったい、ゆったりとした2人のやりとりが、ほほえましく、安らかだ。 川上の紡ぐ言葉と情景がやわらかで、温かく、人を愛することのせつなさがじんわりと伝わってくる作品だ。(七戸綾子) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

 

【投稿者】

20代 女性