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藪の中:芥川龍之介 - 私の人生に影響を与えた本 vol.0120

 

【投稿者】

40代 男性

【人生に影響を与えた理由】

この小説は「真実」とは何かということを問うている優れた教養小説だと認識しています。 きちんと読んだのは専門過程が始まる前の、大学一年生のときでした。 当時の読後の感想としては「ああ、人によって証言がことなるんだな、まったく人間とは身勝手な生き物だ」という風な認識でした。 現在はテレビ・ネット・新聞で様々な情報、意見を目にすることができます。 情報の発信者側は「公正・客観・中立」を謳っていたり、あからさまな左派など様々ですが、 何にせよ、この世の中で多くの事実がある中で、それを選別し情報化したのちに発信するということは 発信者、放送局の思想、つまり主観がどうあがいても切り離せないわけです。 そういった意味で、報道において「公正・客観・中立」などということはあり得ないという至極単純な結論に至るのでした。 そのことに気が付いてからは芥川龍之介の「藪の中」という小説の問いかけが私の至った結論とリンクしました。 それからは、テレビやネットおよび本についても、情報の発信者の思想や思惑、背景にある利害関係を考えるようになりました。 唯一正しい真実を捉えることが出来るのは人間では不可能であり、極めて限定的なフレームからでしか真実には迫ることができない という人間の限界を知りました。例えば、最近は様々な議論で「はい。論破」という言葉がはやっておりますが、 極めて傲慢であり知性の低下を感じます。加えていうなら、白か黒かという二元論的な方向に偏りつつある 日本人の志向、例えば勝ち組、負け組などという言葉もその代表ではないでしょうか。 芥川が大正時代に「藪の中」で提示した「人間の限界」は私が様々な情報を受け止める際の指針となっています。本当に意義深い小説に出会えたと感じています。

【内容】

わたしが搦め取った男でございますか?これは確かに多襄丸と云う、名高い盗人でございます―。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「薮の中」。

 

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